しばいぬ放射線技師の血管造影(アンギオ)業務って具体的に何をするの?CT/MRIとどう違うの?
カテーテル検査室(カテ室)は、放射線技師のなかでも少し特殊な空間。配属前は「具体的に何をするのかイメージできない」「緊急呼び出しが不安」と感じる方が少なくありません。
SNSやQ&Aサイトでも「カテ室は施設ごとにやることが全然違う」「オンコールの緊急呼び出しが精神的にキツい」という声がある一方、「治療が成功した瞬間の達成感は他のモダリティでは味わえない」というポジティブな意見も多く見られます。
この記事を読んでわかること
- 血管造影(アンギオ)検査の基本と放射線技師の立ち位置
- 「検査」と「治療(IVR)」の種類と違い
- アンギオ室での放射線技師の具体的な仕事内容(5ステップ)
- カテ室担当の1日のタイムスケジュール例
- アンギオ業務のやりがい5選と大変なこと(リアルな声つき)
- IVR認定技師の取得条件とキャリアアップへの効果
この記事の信頼性
- 筆者は現役11年目の診療放射線技師(約300人規模の病院勤務)
- 厚生労働省の統計データや公的資料を出典として使用
- SNS・Q&Aサイトから集めた現場のリアルな声を「世間の声」として紹介



現役放射線技師の視点で、アンギオ業務のリアルを解説していきます!
放射線技師の血管造影(アンギオ)検査とは?基本をわかりやすく解説
血管造影検査(アンギオグラフィー)とは、カテーテルという細い管を血管内に挿入し、造影剤を注入してX線で血管を映し出す検査です。英語のAngiographyを略して「アンギオ」、またはカテーテルを使うことから「カテ」とも呼ばれます。
レントゲンやCT・MRIが「体の外から撮影する」のに対し、アンギオはカテーテルを血管の中に入れて"内側から"検査・治療する点が最大の違いです。リアルタイムで血管の状態を確認しながら、そのまま治療に移行できるのが特徴です。
放射線技師はこのアンギオ検査において、X線装置の操作・被ばく管理・リアルタイムの画像提供を中心に担当します。医師がカテーテルを操作する横で、術者が必要とする画像を的確に撮影・提供する「縁の下の力持ち」的な存在です。



撮影だけじゃなくて治療にも関わるの?



そこがアンギオの最大の特徴です。検査だけでなく、血管を広げたり詰めたりする治療にも放射線技師は立ち会い、画像面でサポートします。
血管造影の種類|「検査」と「治療(IVR)」の違い
血管造影は大きく「検査目的」と「治療目的(IVR)」の2つに分かれます。ここを理解しておくと、カテ室での業務の全体像がグッとつかみやすくなります。
血管造影「検査」の主な種類
血管造影検査は、対象となる血管や臓器によっていくつかの種類に分かれます。
- 心臓カテーテル検査(心カテ):冠動脈の狭窄や閉塞を評価する。最も件数が多い
- 脳血管造影検査:脳動脈瘤やAVM(動静脈奇形)の有無を精密に評価する
- 腹部血管造影検査:肝臓・腎臓などの血管を評価する。腫瘍の栄養血管の同定にも
- 四肢血管造影検査:末梢動脈の狭窄・閉塞を評価する(閉塞性動脈硬化症など)
血管内治療(IVR)の主な種類
IVR(Interventional Radiology=画像下治療)は、カテーテルを使って血管の中から治療を行う手技です。外科手術に比べて体への負担が小さく、近年急速に広がっている治療法です。
- PCI(経皮的冠動脈インターベンション):冠動脈の狭窄部をバルーンやステントで拡張する
- TACE(肝動脈化学塞栓術):肝がんの栄養血管を塞栓し、抗がん剤を注入する
- コイル塞栓術:脳動脈瘤にコイルを詰めて破裂を予防する
- EVT(末梢血管治療):足の血管の狭窄・閉塞をバルーンやステントで治療する
- TAE(動脈塞栓術):出血源の血管を塞栓して止血する(外傷・産後出血など)
CT/MRIとの最大の違い=「治療に直結する」
CTやMRIは基本的に「診断」のための検査です。一方、アンギオは検査でわかった異常に対して、そのまま治療に移行できるのが決定的な違いです。
たとえば心カテで冠動脈の狭窄が見つかれば、その場でPCI(ステント留置)に移行する。脳血管造影で動脈瘤が確認されれば、コイル塞栓術を実施する。放射線技師はこうした検査から治療への切り替えにも、装置操作と画像提供でリアルタイムに対応します。
複雑な心カテや脳血管内治療では、手技が10時間以上に及ぶこともあります。長丁場の症例では技師の交代も含めた体制づくりが必要です。
アンギオ室での放射線技師の具体的な仕事内容


アンギオ室で放射線技師が担当する業務を、検査の流れに沿って5つのステップで解説します。
検査オーダーの確認後、アンギオ装置の起動と動作チェックを行います。使用するカテーテルやデバイスの種類に合わせて装置のプリセットを設定し、造影剤のインジェクター(自動注入器)の準備も実施。被ばく線量を最適化するためのプロトコル選択もこの段階で行います。
患者さんをアンギオ室に案内し、テーブルに寝ていただきます。心電図モニターや血圧計の装着をサポートし、検査の流れや所要時間を簡潔に説明します。患者さんの不安を和らげるコミュニケーションも大事な業務のひとつです。
カテ室で最も重要な業務です。医師の指示に合わせてアームの角度調整、DSA(デジタルサブトラクション血管撮影)の実施、透視条件の最適化を行います。術者が「今見たい血管」をリアルタイムに描出し、治療判断に直結する画像を提供するのが技師の腕の見せどころです。
検査中の被ばく線量の記録、画像の保存と整理を行います。必要に応じてロータショナル撮影からの3D再構成や、血管の計測(ステントサイズの選定に使う)なども技師の担当です。提供した画像はPACSに転送し、カルテにも記録します。
検査終了後、装置やテーブルの清掃・消毒を行い、次の検査に備えます。使用したデバイスの記録、被ばく線量の最終確認とレポート作成も重要な業務。緊急カテの場合はスピーディーな片付けが求められます。
経験者からは「自分が撮った画像が診断の決定打になった瞬間は、技師冥利に尽きる」という声も聞かれます。検査の全工程に関わるため、責任は重いですがその分やりがいも大きいモダリティです。



CTやMRIは基本的に一人で操作しますが、アンギオは医師・看護師と一緒にチームで動くのが大きな特徴です。
カテ室担当の1日の流れ【タイムスケジュール例】
カテ室担当の放射線技師の1日は、予定検査をこなしつつ緊急に備える流れです。以下は急性期病院での一般的なスケジュール例です。
| 時間 | 業務内容 |
|---|---|
| 8:00 | 出勤・装置の立ち上げ・動作チェック |
| 8:30 | 予定検査の確認・デバイス準備・プロトコル設定 |
| 9:00〜12:00 | 午前の予定検査(心カテ2〜3件が目安) |
| 12:00〜13:00 | 昼休憩(※緊急カテが入れば中断) |
| 13:00〜16:00 | 午後の予定検査・IVR(PCI・TAE等) |
| 16:00〜16:30 | 画像整理・被ばく線量記録・カルテ記載 |
| 16:30〜17:00 | 装置メンテナンス・翌日の準備・退勤 |



緊急が入ったら昼休憩もなくなるの…?



正直、緊急カテが重なると昼食が夕方になることもあります。ただ、それも含めて「命を救う現場にいる」実感が持てるのがカテ室です。
アンギオ業務のやりがい5選|現場のリアルな声


アンギオ業務は確かに大変ですが、それを上回るやりがいがあると多くの経験者が語っています。ここでは5つのやりがいをリアルな声とともに紹介します。
(1)治療の成功に直接貢献できる
アンギオ業務の最大のやりがいは、治療の成功に直接関われることです。CTやMRIが「診断のサポート」であるのに対し、アンギオでは自分の画像提供や装置操作が治療の成否に直結します。
経験者からは「急性心筋梗塞のPCIで、自分が最適な角度で撮影した画像のおかげで術者がスムーズにステントを留置できた時は、本当にうれしかった」という声もあります。
(2)高い専門性が身につく
血管解剖、デバイスの知識、DSAの撮影技術、被ばく管理など、アンギオ業務で求められるスキルは多岐にわたります。だからこそ、経験を積むほどに専門性が深まり、「自分にしかできない仕事」という実感が持てるようになります。
SNSでは「血管の走行は道路のように覚える。最初は迷子だけど、慣れると地図なしで歩けるようになる」という先輩技師の声も。解剖学を実践で学べるのもアンギオの魅力です。
(3)チーム医療の最前線で働ける
カテ室は医師・看護師・臨床工学技士・放射線技師がひとつのチームとして動く空間です。CTやMRIのように一人で黙々と撮影するのではなく、リアルタイムでコミュニケーションを取りながら治療を進めます。
「チームで一つの治療を成功させた時の達成感」は、アンギオ経験者が口をそろえて語るやりがいのひとつです。
(4)転職市場での評価が高い
アンギオ、特に心カテの経験者は転職市場で非常に高く評価されます。循環器専門病院や急性期病院の求人では「心カテ経験者優遇」の条件が付くことが珍しくありません。
Q&Aサイトでも「心カテ経験があれば転職で困ることはまずない」「どの施設でも重宝される」という意見が多く見られます。専門性の高さがそのままキャリアの武器になるのは、アンギオ業務の大きなメリットです。
(5)認定資格でキャリアアップできる
アンギオ業務には「IVR認定技師」という認定資格があり、取得することでさらなるキャリアアップが可能です。資格を持っていると院内での評価が上がるだけでなく、転職時の差別化にもつながります。詳しくはこの記事の後半で解説します。
放射線技師がアンギオ業務で大変なこと・きついと感じるポイント


やりがいの多いアンギオ業務ですが、当然ながら大変な面もあります。経験者の声をもとに、代表的なポイントを紹介します。
緊急カテとオンコールのプレッシャー
急性期病院のカテ室は、24時間365日の緊急対応が求められます。オンコール体制を敷いている施設がほとんどで、夜間・休日でも呼び出しがあれば病院に駆けつける必要があります。
SNSでは「3日に1回オンコール。深夜の緊急カテが続いた週は正直寝不足でキツい」という声も。心身ともに負担が大きい部分です。
鉛プロテクターの重さ(約4〜5kg)
アンギオ室では術者と同じ検査室内で業務を行うため、被ばく防護用の鉛入りプロテクター(防護衣)を着用します。この重さが約4〜5kg。1日中着用していると肩や腰への負担がかなり大きくなります。
鉛プロテクターの長時間着用による肩こりや腰痛は、カテ室担当の技師にとって"職業病"とも言えるほど。軽量タイプのプロテクターを導入する施設も増えてきています。
被ばくへの不安
アンギオ業務は放射線技師の業務のなかでも被ばく量が多い傾向にあります。2021年4月にはICRPの勧告を踏まえた法令改正により、水晶体の等価線量限度が年間150mSvから50mSvに引き下げられました(5年間の平均で年間20mSv以下も要件)。
これに伴い、鉛防護メガネの着用やリアルタイム線量モニターの導入が進んでいます。適切な防護を行えば管理可能な範囲ですが、精神的な不安を感じる技師が少なくないのも事実です。
長時間に及ぶ緊張感
アンギオは1件の検査・治療が長時間に及ぶことがあります。特に複雑な症例では10時間を超えることも珍しくありません。その間、常に集中力を維持し、医師の指示に即座に対応する必要があります。



大変なことは確かにありますが、それを上回るやりがいがあるのもアンギオの魅力です。向き不向きもあるので、次のセクションで確認してみてください。
放射線技師がアンギオ業務で求められるスキルと向いている人
アンギオ業務は放射線技師のなかでも専門性が高く、求められるスキルや適性がはっきりしています。以下のようなスキル・特性がある人はアンギオに向いていると言えます。
- 解剖学の知識:特に血管解剖の理解が必須。冠動脈・脳血管・腹部血管の走行を把握している必要がある
- 空間認識力:3次元の血管を2次元のX線画像で把握する力。アームの角度で見え方が変わるため立体的な想像力が重要
- 瞬時の判断力:術者の動きを見て次に必要な撮影角度やタイミングを先読みする力
- コミュニケーション力:医師・看護師・臨床工学技士とリアルタイムで連携するため、簡潔・正確な情報伝達が求められる
- ストレス耐性:緊急対応や長時間の手技に耐えるメンタルと体力
経験者のなかには「地図が読める人はアンギオ向き。血管も道路も、全体像をイメージしながらルートを探る感覚が似ている」と表現する人もいます。



逆に向いていない人っているの?



一人で黙々と作業したい人や、オンコールの生活リズムが合わない人は少しつらいかもしれません。ただ、最初は苦手でも経験で伸びる部分も多いですよ。
IVR認定技師とは?キャリアアップに役立つ資格
アンギオ業務でキャリアアップを目指すなら、「IVR認定技師」の取得を検討する価値があります。ここでは資格の概要と取得条件を紹介します。
IVR認定技師は、JAPIR(日本血管撮影・インターベンション専門診療放射線技師認定機構)が認定する資格です。JAPIRは日本放射線技術学会をはじめとする7団体で構成されており、IVR分野における放射線技師の専門性を公式に証明する資格として位置づけられています。
IVR認定技師の主な取得条件
・診療放射線技師免許を有し、臨床経験3年以上
・IVR関連の臨床実績50症例以上
・認定に必要な単位30単位以上の取得
・指定講習会の受講
・認定試験への合格
※条件は変更される可能性があります。最新情報はJAPIR公式サイトをご確認ください。
Q&Aサイトでは「放射線技師の民間資格のなかでも、IVR認定技師はちゃんと評価される資格」「転職面接で持っていると話が早い」という声が見られます。取得のハードルは低くありませんが、アンギオ業務を極めたい方にはおすすめです。
アンギオ業務と年収の関係
アンギオ業務の経験は年収にどう影響するのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、診療放射線技師の平均年収は約556万円です(令和6年賃金構造基本統計調査)。ただし、アンギオ担当だから年収が大幅に上がるわけではなく、年収差が生まれるのは主にオンコール手当・当直手当・施設規模・地域によるところが大きいのが実情です。
- オンコール手当:待機1回あたり1,000〜3,000円程度、呼び出し時は別途時間外手当が発生する施設が多い
- 当直手当:1回あたり10,000〜20,000円程度が目安(※施設によって大きく異なります)
- 転職市場での評価:心カテ経験者は求人の選択肢が広がり、好条件のオファーを受けやすい傾向がある
アンギオ業務は新人でもできる?配属の流れ
「カテ室ってベテランしか配属されないの?」と思う方もいるかもしれませんが、結論から言うと新人でもカテ室に配属されるケースはあります。ただし、施設によって配属の流れは大きく異なります。
多くの総合病院では、まず一般撮影やCT・MRIなど基本的なモダリティを経験してから、ローテーションでカテ室に配属されるのが一般的です。
レントゲンやポータブル撮影で、患者対応・撮影技術・被ばく管理の基礎を身につけます。
CT・MRI・透視検査など、複数のモダリティを順番に経験します。この段階で適性や希望を見ながらカテ室への配属が検討されることが多いです。
最初は見学からスタートし、次に先輩の助手として補助業務を担当。徐々に一人で装置操作ができるように段階的にトレーニングを受けます。一人立ちまでの目安は半年〜1年程度です。
循環器専門病院や一部の急性期病院では、新卒からいきなりカテ室に配属されるケースもあります。こうした施設では教育体制が充実していることが多く、短期間で実力がつきやすいという声もあります。



どの施設でも共通しているのは「いきなり一人でやらされることはない」ということ。段階的に教えてもらえるので、配属前に不安を感じすぎる必要はありません。
アンギオ経験を活かせる職場は他にもあります。まずはどんな求人があるか確認してみましょう。
よくある質問
心カテ(心臓カテーテル検査)は血管造影検査の一種です。血管造影は心臓・脳・腹部・四肢など全身の血管を対象にする検査の総称で、そのうち冠動脈(心臓の血管)を対象にしたものが「心カテ」と呼ばれます。心カテは血管造影のなかで最も件数が多い検査です。
CTやMRIと比べると被ばく量が多い傾向にあります。ただし、鉛プロテクター・防護メガネ・天吊り防護板などを適切に使用すれば管理可能な範囲です。2021年には水晶体の等価線量限度が引き下げられ、各施設で防護対策がより強化されています。詳しくは「放射線技師の被ばくを徹底解説」をご覧ください。
アンギオ業務を専門にしたい方にはおすすめです。転職時に「IVR認定技師」を持っていると専門性の証明になり、評価が上がる傾向があります。取得には臨床3年以上・50症例以上などの条件がありますが、キャリアアップを目指すなら検討する価値は十分あります。詳しくは「放射線技師の認定資格まとめ」をどうぞ。
急性期病院ではほぼ必須です。特に循環器科がある施設では、急性心筋梗塞などへの24時間対応が求められるためオンコール体制を敷いています。一方、クリニックや予定検査のみの施設ではオンコールがないケースもあります。詳しくは「放射線技師の当直を解説」をご覧ください。
大変さの性質が異なるため、一概には比較できません。CTは件数が多く回転の速さが求められる一方、アンギオは1件あたりの集中力と緊急対応が求められます。どちらが合うかは個人の適性次第です。CT業務について詳しくは「放射線技師のCT業務を徹底解説」をどうぞ。
アンギオのスキルは転職市場で高く評価されます。自分の市場価値を確認してみるのもおすすめです。
まとめ|アンギオ業務は放射線技師の"花形"モダリティ
血管造影(アンギオ)業務は、放射線技師のなかでも「治療に直接関われる」という唯一無二のやりがいを持つモダリティです。オンコールや被ばく、長時間の緊張感など大変な面はあるものの、チーム医療の最前線で専門性を発揮できる"花形"の業務として、多くの技師から高い評価を得ています。
この記事のポイント
・アンギオは「検査+治療」ができる唯一のモダリティで、放射線技師も治療の成功に直接貢献できる
・専門性が高く転職市場での評価も高い。IVR認定技師の取得でさらにキャリアアップが可能
・緊急カテ・オンコール・被ばく・長時間手技など大変な面もあるが、経験者の多くが「やりがいが上回る」と語る
・新人でも段階的にOJTで習得できるので、配属前に不安を感じすぎる必要はない
アンギオ業務に興味がある方、これからカテ室に配属される方にとって、この記事が少しでも参考になればうれしいです。






